航空・鉄道事故調査委員会設置法(昭和四十八年法律第百十三号)
最終更新:平成十八年法律第十九号
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航空・鉄道事故調査委員会設置法をここに公布する。
航空・鉄道事故調査委員会設置法
昭和四十八年十月十二日法律第百十三号
(目的)
第一条この法律は、航空事故及び鉄道事故の原因並びにこれらの事故に伴い発生した被害の原因を究明するための調査を適確に行わせるとともに、これらの事故の兆候について必要な調査を行わせるため航空・鉄道事故調査委員会を設置し、もつて航空事故及び鉄道事故の防止並びにこれらの事故が発生した場合における被害の軽減に寄与することを目的とする。
(設置)
第二条国土交通省に、航空・鉄道事故調査委員会(以下「委員会」という。)を置く。
(定義)
第二条の二この法律において「航空事故」とは、航空法(昭和二十七年法律第二百三十一号)第七十六条第一項各号に掲げる事故をいう。
この法律において「航空事故の兆候」とは、機長が航行中他の航空機との衝突又は接触のおそれがあつたと認めた事態その他航空法第七十六条の二の国土交通省令で定める事態をいう。
この法律において「航空事故等」とは、航空事故及び航空事故の兆候をいう。
この法律において「鉄道事故」とは、鉄道事業法(昭和六十一年法律第九十二号)第十九条の列車又は車両の運転中における事故及び専用鉄道において発生した列車の衝突又は火災その他の列車又は車両の運転中における事故並びに軌道において発生した車両の衝突又は火災その他の車両の運転中における事故であつて、国土交通省令で定める重大な事故をいう。
この法律において「鉄道事故の兆候」とは、鉄道事故が発生するおそれがあると認められる国土交通省令で定める事態をいう。
この法律において「鉄道事故等」とは、鉄道事故及び鉄道事故の兆候をいう。
(所掌事務)
第三条委員会の所掌事務は、次のとおりとする。
航空事故の原因を究明するための調査を行うこと。
航空事故に伴い発生した被害の原因を究明するための調査を行うこと。
航空事故の兆候について航空事故を防止する観点から必要な調査を行うこと。
鉄道事故の原因を究明するための調査を行うこと。
鉄道事故に伴い発生した被害の原因を究明するための調査を行うこと。
鉄道事故の兆候について鉄道事故を防止する観点から必要な調査を行うこと。
前各号の調査の結果に基づき、航空事故及び鉄道事故の防止並びにこれらの事故が発生した場合における被害の軽減のため講ずべき施策について勧告すること。
航空事故及び鉄道事故の防止並びにこれらの事故が発生した場合における被害の軽減のため講ずべき施策について建議すること。
前各号に掲げる事務を行うため必要な調査及び研究を行うこと。
(職権の行使)
第四条委員会の委員長及び委員は、独立してその職権を行なう。
(組織)
第五条委員会は、委員長及び委員九人をもつて組織する。
委員のうち四人は、非常勤とする。
委員長は、会務を総理し、委員会を代表する。
委員長に事故があるときは、あらかじめその指名する常勤の委員が、その職務を代理する。
(委員長及び委員の任命)
第六条委員長及び委員は、委員会の所掌事務の遂行につき科学的かつ公正な判断を行うことができると認められる者のうちから、両議院の同意を得て、国土交通大臣が任命する。
委員長又は委員につき任期が満了し、又は欠員を生じた場合において、国会の閉会又は衆議院の解散のために両議院の同意を得ることができないときは、国土交通大臣は、前項の規定にかかわらず、同項に定める資格を有する者のうちから、委員長又は委員を任命することができる。
前項の場合においては、任命後最初の国会において両議院の事後の承認を得なければならない。この場合において、両議院の事後の承認を得られないときは、国土交通大臣は、直ちにその委員長又は委員を罷免しなければならない。
次の各号のいずれかに該当する者は、委員長又は委員となることができない。
破産者で復権を得ないもの
禁錮以上の刑に処せられた者
航空運送事業者若しくは航空機若しくは航空機の装備品の製造、改造、整備若しくは販売の事業を営む者又はこれらの者が法人であるときはその役員(いかなる名称によるかを問わず、これと同等以上の職権又は支配力を有する者を含む。)若しくはこれらの者の使用人その他の従業者
鉄道事業者若しくは軌道経営者若しくは鉄道若しくは軌道の用に供する車両、信号保安装置その他の陸運機器の製造、改造、整備若しくは販売の事業を営む者又はこれらの者が法人であるときはその役員(いかなる名称によるかを問わず、これと同等以上の職権又は支配力を有する者を含む。)若しくはこれらの者の使用人その他の従業者
前二号に掲げる事業者の団体の役員(いかなる名称によるかを問わず、これと同等以上の職権又は支配力を有する者を含む。)又は使用人その他の従業者
(任期)
第七条委員長及び委員の任期は、三年とする。ただし、補欠の委員長又は委員の任期は、前任者の残任期間とする。
委員長及び委員は、再任されることができる。
(罷免)
第八条国土交通大臣は、委員長又は委員が第六条第四項各号の一に該当するに至つたときは、これらを罷免しなければならない。
国土交通大臣は、委員長若しくは委員が心身の故障のため職務の執行ができないと認めるとき、又は委員長若しくは委員に職務上の義務違反その他委員長若しくは委員たるに適しない行為があると認めるときは、あらかじめ委員会の意見を聴いた上、両議院の同意を得て、これらを罷免することができる。
(会議)
第九条委員会は、委員長が招集する。
委員会は、委員長及び四人以上の委員の出席がなければ、会議を開き、議決をすることができない。
委員会の議事は、出席者の過半数でこれを決し、可否同数のときは、委員長の決するところによる。
委員長に事故がある場合の第二項の規定の適用については、第5条第4項の規定により委員長の職務を代理する常勤の委員は、委員長とみなす。
(服務)
第十条委員長及び委員は、職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない。その職務を退いた後も、同様とする。
委員長及び委員は、在任中、政党その他の政治的団体の役員となり、又は積極的に政治運動をしてはならない。
委員長及び常勤の委員は、在任中、国土交通大臣の許可のある場合を除くほか、報酬を得て他の職務に従事し、又は営利事業を営み、その他金銭上の利益を目的とする業務を行つてはならない。
(給与)
第十一条委員長及び委員の給与は、別に法律で定める。
(専門委員)
第十二条委員会に、専門の事項を調査させるため、専門委員を置くことができる。
専門委員は、学識経験のある者のうちから、委員会の意見を聴いて、国土交通大臣が任命する。
専門委員は、非常勤とする。
(職務従事の制限)
第十三条委員会は、委員長、委員又は専門委員が航空事故等又は鉄道事故等(以下「事故等」という。)の原因(航空事故又は鉄道事故については、これらの事故に伴い発生した 被害の原因を含む。以下同じ。)に関係があるおそれのある者と密接な関係を有すると認めるときは、当該委員長、委員又は専門委員を当該事故等に関する調査(以下「事故等調査」という。)に従事させてはならない。
前項の委員長又は委員は、当該事故等調査に関する委員会の会議に出席することができない。
(事務局)
第十四条委員会の事務を処理させるため、委員会に事務局を置く。
事務局に、事務局長、事故調査官その他の職員を置く。
事務局長は、委員長の命を受けて、局務を掌理する。
事務局の内部組織は、国土交通省令で定める。
(事故等調査)
第十五条委員会は、国際民間航空条約の規定並びに同条約の附属書として採択された標準、方式及び手続に準拠して、第3条第一号から第三号までに規定する調査を行うものとする。
委員会は、事故等調査を行うため必要があると認めるときは、次に掲げる処分をすることができる。
航空機の使用者、航空機に乗り組んでいた者、航空事故に際し人命又は航空機の救助に当たつた者その他の航空事故等の関係者(以下「航空事故等関係者」という。)から報告を徴すること。
鉄道事業者、軌道経営者、列車又は車両に乗務していた者、鉄道事故に際し人命の救助に当たつた者その他の鉄道事故等の関係者(以下「鉄道事故等関係者」という。)から報告を徴すること。
事故等の現場、航空機の使用者、鉄道事業者又は軌道経営者の事務所その他の必要と認める場所に立ち入つて、航空機、鉄道施設、帳簿、書類その他の事故等に関係のある物件(以下「関係物件」という。)を検査し、又は航空事故等関係者若しくは鉄道事故等関係者(以下「関係者」という。)に質問すること。
関係者に出頭を求めて質問すること。
関係物件の所有者、所持者若しくは保管者に対し当該物件の提出を求め、又は提出物件を留め置くこと。
関係物件の所有者、所持者若しくは保管者に対し当該物件の保全を命じ、又はその移動を禁止すること。
事故等の現場に、公務により立ち入る者及び委員会が支障がないと認める者以外の者が立ち入ることを禁止すること。
委員会は、必要があると認めるときは、委員長、委員又は事務局の職員に前項各号に掲げる処分を、専門委員に同項第三号に掲げる処分をさせることができる。
前項の規定により第二項第三号に掲げる処分をする者は、その身分を示す証票を携帯し、かつ、関係者の請求があるときは、これを提示しなければならない。
第二項又は第三項の規定による処分の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解釈してはならない。
(調査等の委託)
第十五条の二委員会は、事故等調査を行うため必要があると認めるときは、調査又は研究の実施に関する事務の一部を、独立行政法人(独立行政法人通則法(平成十一年法律第百三号)第二条第一項に規定する独立行政法人をいう。第十八条において同じ。)、民法(明治二十九年法律第八十九号)第三十四条の規定により設立された法人、事業者その他の民間の団体又は学識経験を有する者に委託することができる。
前項の規定により事務の委託を受けた者若しくはその役員若しくは職員又はこれらの職にあつた者は、当該委託事務に関して知り得た秘密を漏らしてはならない。
第一項の規定により事務の委託を受けた者又はその役員若しくは職員であつて当該委託事務に従事するものは、刑法(明治四十年法律第四十五号)その他の罰則の適用については、法令により公務に従事する職員とみなす。
(事故等の発生の通報)
第十六条国土交通大臣は、航空法第七十六条第一項若しくは第二項若しくは第七十六条の二若しくは鉄道事業法第十九条若しくは第十九条の二の規定により事故等について報告があつたとき、又は事故等が発生したことを知つたときは、直ちに委員会にその旨を通報しなければならない。
(国土交通大臣の援助)
第十七条委員会は、事故等調査を行うため必要があると認めるときは、国土交通大臣に対し、事故等についての事実の調査又は物件の収集の援助その他の必要な援助を求めることができる。
国土交通大臣は、前項の規定により事故等についての事実の調査の援助を求められた場合において、必要があると認めるときは、その職員に第十五条第二項第三号に掲げる処分をさせることができる。
国土交通大臣は、事故等が発生したことを知つたときは、直ちに当該事故等について事実の調査、物件の収集その他の委員会が事故等調査を円滑に開始することができるための適切な措置をとらなければならない。
国土交通大臣は、前項の規定による措置をとるため必要があると認めるときは、その職員に第十五条第二項各号に掲げる処分をさせることができる。
第十五条第四項及び第五項の規定は、第二項又は前項の規定により職員が処分をする場合について準用する。
(関係行政機関等の協力)
第十八条委員会は、事故等調査を行うため必要があると認めるときは、関係行政機関の長、関係地方公共団体の長、関係する独立行政法人の長又は関係する地方独立行政法人(地方独立行政法人法(平成十五年法律第百十八号)第二条第一項に規定する地方独立行政法人をいう。)の理事長に対し、資料又は情報の提供その他の必要な協力を求めることができる。
(原因関係者等の意見の聴取)
第十九条委員会は、事故等調査を終える前に、当該事故等の原因に関係があると認められる者に対し、意見を述べる機会を与えなければならない。
委員会は、必要があると認めるときは、事故等調査を終える前に、意見聴取会を開き、関係者又は学識経験のある者から当該事故等に関して意見を聴くことができる。
旅客を運送する航空運送事業の用に供する航空機について発生した航空事故等又は旅客を運送する鉄道事業若しくは軌道事業の用に供する鉄道若しくは軌道において発生した鉄道事故等であつて一般的関心を有するものについては、前項の意見聴取会を開かなければならない。
(報告書等)
第二十条委員会は、事故等調査を終えたときは、当該事故等に関する次の事項を記載した報告書を作成し、これを国土交通大臣に提出するとともに、公表しなければならない。
事故等調査の経過
認定した事実
事実を認定した理由
原因
前項の報告書には、少数意見を附記するものとする。
委員会は、事故等調査を終える前においても、事故等が発生した日から一年以内に事故等調査を終えることが困難であると見込まれる等の事由により必要があると認めるときは、事故等調査の経過について、国土交通大臣に報告するとともに、公表するものとする。
(勧告)
第二十一条委員会は、事故等調査を終えた場合において、必要があると認めるときは、その結果に基づき、航空事故若しくは鉄道事故の防止又はこれらの事故が発生した場合における被害の軽減のため講ずべき施策について国土交通大臣に勧告することができる。
国土交通大臣は、前項の規定による勧告に基づき講じた施策について委員会に通報しなければならない。
(建議)
第二十二条委員会は、必要があると認めるときは、航空事故若しくは鉄道事故の防止又はこれらの事故が発生した場合における被害の軽減のため講ずべき施策について国土交通大臣又は関係行政機関の長に建議することができる。
(政令への委任)
第二十三条この法律に定めるもののほか、委員会に関し必要な事項は、政令で定める。
(不利益取扱いの禁止)
第二十四条何人も、第十五条第二項若しくは第三項又は第十七条第二項若しくは第四項の規定による処分に応ずる行為をしたことを理由として、解雇その他の不利益な取扱いを受けない。
(罰則)
第二十五条第十五条の二第二項の規定に違反した者は、一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
第二十六条次の各号のいずれかに該当する者は、三十万円以下の罰金に処する。
第十五条第二項第一号若しくは第二号、同条第三項又は第十七条第四項の規定による報告の徴取に対し虚偽の報告をした者
第十五条第二項第三号、同条第三項若しくは第十七条第二項若しくは第四項の規定による検査を拒み、妨げ、若しくは忌避し、又はこれらの規定による質問に対し虚偽の陳述をした者
第十五条第二項第四号、同条第三項又は第十七条第四項の規定による質問に対し虚偽の陳述をした者
第十条第二項第五号、同条第三項又は第十七条第四項の規定による処分に違反して物件を提出しない者
第十五条第二項第六号、同条第三項又は第十七条第四項の規定による処分に違反して物件を保全せず、又は移動した者
第二十七条法人の代表者又は法人若しくは人の代理人、使用人その他の従業者が、その法人又は人の業務に関し、前条の違反行為をしたときは、行為者を罰するほか、その法人又は人に対して、同条の刑を科する。
附 則〔抄〕
(施行期日)
第一条この法律は、公布の日から起算して九月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。ただし、次の各号に掲げる規定は、当該各号に定める日から施行する。
第四条、第十条(国土交通省設置法第十五条の改正規定を除く。)、第十一条及び第十二条並びに次条、附則第三条、第五条から第八条まで、第十条、第十一条及び第十三条の規定 平成十八年四月一日
(略)
(航空・鉄道事故調査委員会設置法の一部改正に伴う経過措置)
第五条第十二条の規定による改正後の航空・鉄道事故調査委員会設置法の規定は、同条の規定の施行の日前に発生した事故等で同日においてまだ当該事故等に関する報告書が国土交通大臣に提出されていないものについても適用する。
(罰則に関する経過措置)
第六条この法律(附則第一条各号に掲げる規定については、当該各規定)の施行前にした行為及び附則第四条の規定によりなお従前の例によることとされる場合における同条の規定の施行後にした行為に対する罰則の適用については、なお従前の例による。
(検討)
第八条政府は、この法律の施行後五年を目途として、この法律による改正後の規定の実施状況を勘案し、必要があると認めるときは、当該規定について検討を加え、その結果に基づいて必要な措置を講ずるものとする。
(略)
第十条